Netflix発『ROMA/ローマ』に見る母性と女性蔑視について
映画『ROMA/ローマ』は、2018年に製作された、アルフォンソ・キュアロン監督による作品だ。
この作品は、ベネチア映画祭で、金獅子賞に輝いており、
Netflix作品では初めての快挙となっている。
この作品は、メキシコシティに住む中流階級の家庭を持つ家族と、
彼らとともに生活をする家政婦の生活の姿をうつしたものだ。
中でも、家政婦の一人であるクレオを中心に、彼女目線で物語は進んでいく。
全編を通して白黒映画として描かれる
この作品では、白と黒のみのモノクロ映画となっている。
その理由は、アルフォンソ監督にとって半自伝映画だからということに他ならない。
映画の最後に、本作品のモデルとなった彼の家政婦であるリボに捧げられており、彼自身の体験をこの映画を通して表現しようとしていることがわかる。
母性の存在と、その強さ
クレオはフェルミンという男と交わり、妊娠することになるが、死産してしまう。
その瞬間をカメラはひと時もカットせずに克明に描いており、目を手で覆いたくなるくらい、辛いシーンだ。
彼女が死んだ自分の子供を抱える姿は、非常に悲しみと切なさで満ち溢れている。
その後、家族の母であるソフィと子供達で旅行しにいくことになるのだが、旅行先の浜辺で、子供二人が海に溺れてしまう。
泳ぐことのできないと語るクレオだが、家族同然の子供たちを必死に助けようとし、なんとか救い出すことができる。
その時、彼女は不遇な運命で生まれゆく自分の子供を本当は産みたくなかったと打ち明け、
ともに生活をする家族との愛を強く感じるシーンがあり、それこそが一番上にあるみんなで抱き合うシーンだ。
このシーンは、涙なしには語ることはできない。
女性へのリスペクトの欠如を問題提起
この映画では、クレオとソフィがともに男から逃げられている。
クレオは、妊娠のきっかけとなる初めて性行為をともにした相手であるフェルミンという男に逃げられる。
彼は彼女が再度会いに来た際、脅してクレオを帰らせている。
ソフィは、旦那であるアントニオの不倫によって離婚することとなり、子供の生活の支えの全てを彼女自身が背負うことになる。
いくら旦那であるアントニオが他の女性を愛することになっても、子供たちへの愛を失うことは決してあってはならないことだ。
作中で、精神的に不安定な状態になったソフィはクレオに対して
「なんと言おうと、私たち女性はいつも孤独」だと言うシーンがあり、
ここに女性の家庭内での孤立と、男性の相手の女性に対するリスペクトの欠如を問題視していることを象徴づけていると言える。
タイトルから見る、愛の物語
タイトルである『ROMA』は、反対から読むと「AMOR」となる。
これはスペイン語で「愛」を意味している。
ここから、監督のこの作品におけるメッセージが推察できる。
彼にとって、家政婦を含めた家族には愛が満ちており、それを大切にしてほしいんだと私たちに訴えているように僕は思う。