名もなき映画日記

年間約150本映画を観ている大学生が、映画の感想と考察を中心に書いているブログです。

『わたしは、ダニエル・ブレイク』に見る人々の苦しい生活と、絶えない隣人への愛。

映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』は、2016年に製作された、ケン・ローチ監督による作品だ。

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この作品は、2016年のカンヌ国際映画祭にて、パルムドール賞を獲得している。

 

あらすじ

イギリス北東部ニューカッスルで大工として働く59歳のダニエル・ブレイクは、心臓の病を患い医者から仕事を止められる。国の援助を受けようとするダニエルだったが、複雑な制度が立ちふさがり必要な援助を受けることが出来ない。悪戦苦闘するダニエルだったが、シングルマザーのケイティと二人の子供の家族を助けたことから、交流が生まれる。貧しいなかでも、寄り添い合い絆を深めていくダニエルとケイティたち。しかし、厳しい現実が彼らを次第に追いつめていく。

(filmarksより)

 

増え続ける貧困と格差

ケン・ローチ監督は、2014年に製作した『ジミー、野を駆ける伝説』を最後に、映画界からの引退を表明していたが、

現在のイギリス、そして世界中で広がる貧困や格差に苦しむ人々を目の当たりにして、引退を撤回して本作の製作に挑んだ。

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この作品は、上記したようなイギリスに起きる貧困や格差に苦しむ人々を焦点におき、

彼らの生きる姿を映画にしている。

 

 

常に人々に優しく救いの手を差し伸べるダニエルの姿

ダニエルは、自身が国からの援助が貰えずに苦しい生活を強いられているのにも関わらず、

二人の子供を持つシングルマザーのケイティに対して、子供の面倒を見たり、家の呼称を修理してあげるなど、

見返りを求めない優しさが彼にはある。

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まさに、聖書における隣人愛そのものだ。

 

 

国の不合理なシステム

この作品の中で、ダニエルが慣れないパソコン操作に苦しみ、職員を助けを求めるシーンがある。

 

そこで助けにでた職員の一人であるアンという女性が、彼の操作を手伝ってあげるのだが、

他の職員に見つかり、規定違反だとして途中で中断させられてしまう。

それによって、ダニエルは十分な書類を用意できずに給付を受けることができなくなってしまう。

 

こんなことは、少しの時間でも割いてあげれば、彼が本当は救われていたのかもしれないと思うと、非常に歯がゆい気持ちになる。

 

これが現状なのであれば、今すぐに変えていかなければならないと思わされるシーンだった。

 

 

ケイティが見せる極限のストレスに、胸が苦しくなる

ケイティと子供二人とダニエルで、配給センターに食料や備品を受け取りにいくショーンがある。

 

そこでケイティはスタッフとともに食料などを取っていくのだが、

彼女は取った缶詰をスタッフに見られないようにその場で開けて食べようとする。

それだけ、彼女が何も食料を取らずに飢えの限界まで耐えていたということだ。

 

スタッフとダニエルに介抱されるケイティは泣き崩れる。

その姿を見るだけで、本当に胸が苦しくなる

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本当にイギリスのような先進国でもこのようなことは起きているということだ。

そして、同時に日本でもこのようなことが日常的に起きているということは、忘れてはならない事実だ。

 

 

国家としての機能に限界があるのではないかということ

ケン・ローチ監督は、この映画を通して「政治に訴えてシステムを変えなければなりません。」と述べている。

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これはごもっともな意見で、僕もそうすべきだと思った。

 

でも一方で、国がもっとやるべきことをやらなくてはならないと思ったと同時に、

 

国がやれることにも限界があるのではないかと僕は思った。

 

書類の手続きの簡略化や支援などは、今の状態から改善していくことは十分に可能だが、

それだけで彼らの全員を貧困から救い出すことは不可能だ。

 

 

そこで、僕は地域や企業、そして個人というより小さなスケールで支援を行っていく必要があると思う。

 

NPO団体などの活動は現在でも行われているが、それだけではなくて、

あらゆる貧困の問題を抱えた人々を救うために仕組み作りも同時に行っていかなければならない

 

そうしないと、彼が最後に遺した、隣人愛は彼のものとして留まり、

それが次につながっていくことがなくなってしまうのは問題だ。

 

 

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