『シンプルメン』をアップリンク吉祥寺で観た。 ネタバレなしで映画を観る前にオススメしたいこと。
映画『シンプルメン』は、1992年に製作された、ハル・ハートリー監督による作品だ。
あらすじ
ニューヨークで泥棒をしている兄ビル(ロバート・バーク)と、真面目な大学生の弟デニス(ウィリアム・セイジ)。二人には伝説的な野球選手であり今では疎遠な父親がいたが、23年前の爆破テロ事件の容疑者として逮捕される。兄弟は刑務所を訪れるも父は脱走。二人は父親を捜そうと、女主人ケイト(カレン・サイラス)とルーマニア人女性エリナ(エリナ・レーヴェンソン)のいるバーを訪れる。
(シネマトゥデイより)
この作品は、刑務所から脱走した父の行方を追う、二人の兄弟の姿を描いた作品だ。
いわゆる、「ロードムービー」というジャンルの映画だ。
ロードムービーというだけあって、兄弟の二人は荒野を旅し、そこで出会う人との交流を通して
彼らの思いが変化していく。
今回は、この映画を観る前に、ぜひ知っておきたいこの映画の素晴らしさを紹介したいと思う。
映画的なことは起こらないということ
この映画では、怪獣も出てこないし、殺人も起きない。
言葉に収まらない感情を、表情で、行動で、時にダンスで見せる。
それに魅せられる。
ロードムービーならではの細かい機微な反応を見ることで、彼らの持つ様々な思いに触れることができるだろう。
兄弟関係、父子関係を描く
この作品の中心となるのは、上記したように
兄のビルと弟のデニス、そして彼らの父だ。
友人関係はともかく、兄弟や親など、血縁関係にある人との繋がりは特別なものだ。
これもまた簡単に言語化できるものではない。
兄が弟を思う気持ち、弟が兄を思う気持ちは多様でありながら、
その特別さは、この映画にとって、そして僕にとって非常に共感できるものだった。
なので、兄弟関係を持つような人には心から勧めたい作品だ。
また、一体何者なのかわからない父の姿を追うことも、彼らにとって自分とはなんなのかを追うことと同じ意味合いを持つものだといえる。
父子関係の繋がりは、母子関係における愛情とはまた異なった性質を持つ、得体の知れないものだ。
この父子関係の得体の知れなさは、『パリ、テキサス』や『エンドレス・ポエトリー』でも感じることができる。
これを読んで、何かしら引っかかりを感じる人がいれば、ぜひこの作品を強く勧めたい。