名もなき映画日記

年間約150本映画を観ている大学生が、映画の感想と考察を中心に書いているブログです。

『灼熱の魂』に見る、母親の無償の愛情。

映画『灼熱の魂』は、2010年に製作された、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による作品だ。

 

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あらすじ

それはあまりにも突然で奇妙な出来事だった。双子姉弟ジャンヌとシモンの母親ナワルが、ある日プールサイドで原因不明の放心状態に陥り、息絶えたのだ。さらに姉弟を驚かせたのは、ナワルを長年秘書として雇っていた公証人のルベルが読み上げた遺言だった。ルベルはナワルから預かっていた二通の手紙を差し出す。それは姉弟の父親、兄それぞれに宛てられたもので、今どこにいるのか分からない彼らを捜し、その手紙を渡す事が、母の遺言だった。しかし兄の存在など初耳で、父はとうの昔に死んだと思い込んでいた姉弟は困惑を隠せない。シモンは母の遺言を「イカれてる!」と吐き捨てるが、ジャンヌは遺言の真意を知る為に、母の祖国を訪ねる事を決意する。いったいその手紙には何が記されているのか?そして母が命を賭して、姉弟に伝えたかった真実とは…。

(filmarksより )

 ネタバレ感想です。

衝撃的な作品だった。

 

このストーリーは、ナワル・マルワンという女性と、その家族たちの隠された秘密を描いたものだ。

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ナワルには、双子の息子と娘がいる。

そして、彼女の残した遺書から、生前語られることのなかった父と兄の存在を二人に告げられる。

母親の過去を辿り、双子の二人が父と兄を探すのがこの話だ。

 

母親の過ごした場所に訪れ、現地の人と話していくうちに、母親の秘密を知ることになる。

  

 

母親のナワルが、キリスト教右派の幹部を暗殺したこと、15年間も投獄され、レイプされ続けていたこと。

 

 

そして、レイプされた相手こそが、ナワルが探し続けていた息子であったこと。

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つまり、双子の姉弟は、ナワルの息子とナワルの間から産まれたこと。。。

 

 

もう、「衝撃が走る」というか、衝撃が上からのしかかって、そのまま押しつぶされていくような感覚に陥った。

 

あらゆる人生の断片がパズルのピースのように映され、それが一致した時に全ての残酷な真実が目の前に現れる。

 

まさに神がかった脚本だと言える。ドゥニ・ヴィルヌーヴは本当に天才だと思う。

 

 

はじめは、「身元不明の父と兄が二人存在しており、彼らを探し手紙を渡す」という名目のもとストーリーは進んでいくが、

 

最後には、「父親としてのあなた、そして彼らの兄である私の息子としてのあなた」という同一人物に対しての、愛と憎しみの手紙だということが判明する。

 

監禁・レイプされ、孕ませられた悪人への憎しみと、それでも確かにある息子への無償の愛。

どんな過去があろうと、3人の子供達は、かけがえのないものだということ。

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母親の無償の愛。すごい分かるし、これに自分を含める子供達が支えられているとって本当に多いと思う。

 

何も言わずとも、いつでも応援してくれる人ってなかなかいない。その数少ない人、というか僕にとって唯一のそれにあたる存在が自分の母親。

 

エンドレス・ポエトリー』とか、『パリ、テキサス』のような父性に触れる映画も好きだけど、「母親の無償の愛」みたいなものにめっぽう弱い気がする。

yu-asai.hatenablog.com

 


映画『灼熱の魂』予告編