『バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡)』で感じた3つのこと。
映画『バードマン あるいは (無知がもたらす予期せぬ奇跡)』は2014年に製作されたアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督による作品だ。
イニャリトゥ監督は、レヴェナントを監督した人物でもある。
この作品は、2015年のオスカーで、作品賞・脚本賞・監督賞・撮影賞を獲得している。
この作品は、かつてヒーロー映画「バードマン」で主演を演じた男が、落ち目になっている現在から脱却しようと、「愛について語るときに我々の語ること」という題目のブロードウェイの劇を敢行するという話だ。
「バードマン」である主演のマイケル・キートンは、かつてバットマンを演じている。
今回のバードマンは、まさにキートンにとってのバットマンに他ならない。
今回はこの作品を観て感じたことを、3つにまとめて紹介したい。
1. 演者達の「老い」の演出
今回の映画では、マイケルキートン、エドワードノートン、ナオミワッツと往年の名優達が演者役として出演している。
それも3人ともが1度ヒットした元スターという位置付けで登場している。
そこで彼らの映る表情には、「老い」が見事に演出として表現されている。
キートンの薄くなった頭。
ノートンの小太りした上半身。
ナオミのしわ。
彼らの老いの姿の全てが美しく、映画の世界での彼らの存在の信憑性を高めたと思う。
2. ワンカットとCGの併用による独特の世界観の構築
『バードマン』は長回しでの撮影が有名だ。ほとんどのシーンがワンカットで撮られたように撮影、編集されている。
一方で、ワンカットのなかに、主役のリーガンが宙に浮いていたり、バードマンの超能力のような力でものを動かしているシーンなどがある。
これは、長回しによるリアリティと、CGを使ったバーチャリティとの融合によって、
現実と妄想が行き来しているというこの作品特有の世界観がこれで作り上げられたように思う。
3. 不安定で情動的なドラム音楽
作品を通して、ドラムによる音楽が用いられている。
常に不安定で、どこか強烈な力を感じさせるような音楽は、見事に主演のリーガンの心情とマッチングしていた。
その潜在的な強い情動を感じる彼の感情と、それに伴う行動と現象を、ぜひその目と耳で体感してほしい。